2016年10月22日

赤字の会社の運転資金

私が受ける融資に関する相談で最も多いのは、「新たに収益が見込まれる事業を始めるために、運転資金(および設備資金)の申し込みに銀行に行ったが、これまでの事業が赤字のために断られた」というものです。このような申し出は、一見、前向きな印象を受けます。すなわち、収益が見込まれる事業を始めれば、そこから得られた利益で、既存の融資の返済も容易になると考えられるからです。

しかし、銀行は、多くの場合、その見通しをあまり信用していません。その理由の一つは、「新たに収益が見込まれる事業を始める」ということは、既存の事業の赤字の原因は事業そのものが赤字となるものであり、事業をかえれば黒字になるという前提になっています。ところが、銀行は、既存の事業の赤字の原因は、事業そのものが赤字になるものではなく、経営者の事業運営能力の乏しさが赤字の原因と考えています。

もちろん、事業を変えることによって会社が黒字になることはありますが、そういう会社はもともと経営者の能力があるという前提です。多くの会社の場合、「いままでは赤字でしたが、事業を変えるので黒字になります」という見通しが実現するほど現実は簡単にはいかないでしょう。

要は、銀行は「事業」よりも「経営者」を見て融資をしています。ですから、「事業を変える」という材料ではインパクトは弱い訳です。このような、本論でない部分で融資を申し込むよりも、経営者自身が、現在の業況はなぜ赤字なのかを分析し、それを克服する方法を説明することの方が先決でしょう。そして、銀行が新たな融資を渋る時、「私たちはあなたの経営能力を疑っているのですよ」とは口には出さないということも、あわせて注意しておきましょう。



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posted by 六角明雄 at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする