2016年12月25日

価値を生み出しているもの

だいぶ前のことですが、経営コンサルタントの石原明さんが、ご自身が制作しているポッドキャスト番組で、「テーブルにあるタッチパネルの端末で注文を受けている飲食店は、残念なお店だ」という主旨のお話しをされておられました。これは、「飲食店」は「飲みものと食べもの」を提供して利益を得ているのではなく、従業員の方との会話」を提供して利益を得ているからだと、石原さんは考えておられるからです。そして、この考え方に同意される方もたくさんおられるでしょう。

タッチパネルで注文を受けることは、確かに効率性やスピードの観点からは利点があります。しかし、それは、「飲みものや食べもの」を求めに来ている人だけに得られる利点です。では、例えば、「ビールを飲みたい」という人は、わざわざ店に来てビールを飲む必然性があるでしょうか?単にビールを飲むだけならば、量販店でビールを買って家で飲むほうがリーズナブルです。店に来てビールを飲む人は、ビールを飲むために店に来ている訳ではないといことは明白なのに、本来の目的を得られるようにしていないとうことは、本当に残念な店となってしまいます。

このような例は、他の業種でも見られます。DVDレンタル店の最大のライバルはスマートフォーンだそうです。DVDレンタル店には、DVDを観たい人が来るのではなく、(本当にDVDを観たい人もいますが)余った時間を過ごす手段を得るために来ています。ですから、スマートフォーンで遊べるおもしろいオンラインゲームが発売されると、レンタルDVD店の売上に影響するそうです。もうひとつ例をあげると、コンビニエンスストアのライバルは、ファストフード店といわれています。コンビニエンスストアは小売業で、ファストフード店は飲食業ですから、業種としては異なりますが、どちらのお店でも、すばやくご飯をすませることができるという点では共通しています。ですから、どちらも、時間を節約したいという人を奪い合っているということになります。

以上、2つの例をあげましたが、私も、自社の事業がなぜ利益を得られているのかということを把握できずに、間違った方向に事業展開をしようとしている会社の例をしばしば見かけます。自社の事業が利益を確実に得られるようにするためには、顧客が自社に何を求めているのかということも的確に把握していなければなりません。
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2016年12月24日

習慣が信用を高める

私が銀行で働いているときのことですが、めったにはないものの、顧客から罠をかけられそうになったということを何度か経験をしています。具体的には、「2,000万円の融資を申し込んだのに、なぜ、1,000万円しか申し込んでいないことになっているのだ?」といったことや、「普通預金に入金するようにと、20万円を渡したのに、10万円しか入金されていない」といったことを、依頼を受けてから数日後に、支店の上司に直接電話で告げられるということがありました。このようなことをするのは、正攻法では融資を受けられそうにない会社が、銀行の弱みを作って、融資交渉を有利に進めようとする意図によるものです。

ただし、このような罠にかからないようにすることは、少したいへんです。融資の申し込みも、現金の受け渡しも、2人だけのところで行われていれば、言った言わないの論争になってしまうからです。だから、最終的には、顧客と私のどちらの言っていることが信用できるか、ということに行きついてしまいます。そこで、私の場合は、普段の素行について注意を払いました。具体的には、融資の申し込みを受けた時は、詳細は後で報告するという前提で、その日のうちに、上司に対して、メモで、融資申込の内容を伝えておく。預金の依頼を受けた場合は、翌日か翌々日までに通帳を返却する、ということを心がけていました。(現金を預かる場合は、通常は、領収書を発行しますが、言いがかりを付ける人は、「領収書は受け取っていないが、確かに現金を預けた」と主張してくるので、領収書の控えが絶対的な証拠にはなりません。)もちろん、このようなことまでしなくても、私の上司は私を疑うことはしませんが、言いがかりをつけてくる顧客に対して、反論の客観的な根拠を示すことができるようになります。

ここまで書いて、「そんなことをするのは、商売をしている上ではあたりまえだ」と感じる人も多いと思います。しかしながら、起業しようとする方のお手伝いをしたり、融資の申請のお手伝いをしたりする方たちの中には、残念ながら、約束を簡単に破る人たちが少なくないと感じています。もちろん、すべてが完璧な人はいないし、短いお付き合いの中で、お手伝いする相手の方を評価をすることは早計ですが、これから銀行に対して融資をして欲しい、すなわち、自分を信用して欲しいと依頼しようとしている方としては、銀行から信用できる相手と感じてもらうためには、少し疑問を感じるという人も少なくありません。銀行から協力を得るということは、事業を発展させるためには欠かせません。そういったときのために、普段から信用を得るようにする行動を習慣にしておくことが大切でしょう。
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2016年12月23日

銀行にとって給与振り込みは赤字

給料日の後には銀行のATMに大勢の列ができます。私は、この列を見ると、「こんなにたくさんの人が銀行に来るのに、この人たちからあまり収益を得られないなんてもったいない」と考えてしまいます。このように書くと、「銀行は利用者からお金を預かっているだけの立場なのに、預金を引き出しにきた人から収益を得ようとするなんてとんでもない」と考える人も多いと思います。確かにそういう面はあります。

でも、もし、銀行のATMを使わずに、給料を直接会社から受け取るとしたらどうでしょうか?会社の経理の人たちは、前もって現金を用意し、そして、ひとりずつ現金を分けて用意をしたり、従業員の方たちはそれを受け取りにいったりする手間や。また、防犯のことを考えれば、銀行から給料を受け取るという仕組みが、ほぼ無料で利用できるということは、とてもコストパフォーマンスが高いと私は考えています。

もちろん、銀行側にもまったく利点がないとは言えない面もありますし、また、銀行の公共性を鑑みると、給与の受取について手数料を徴収しようとすると、社会的な理解が得られない状況にあるでしょう。さらに、口座に給与を入れてれている人たちから何らかの収益を得ようとして工夫をしているとは思います。しかし、給与の受取という点で見れば、銀行はコスト割れしているでしょう。ここで述べたいことは、必ずしも、コストがかけられているサービスについて、それに見合った収益が得られているとは限らないということです。

ちなみに、ATMの利用1回あたりのコストは200円かかるといわれています。これに対し、2001年に新しく開業したセブン銀行は、ATMのサービスを専門に行いました。そして、他の銀行の顧客に自社のATMを利用させ、その顧客が口座を持つ銀行から手数料を徴収するというビジネスモデルに成功しています。これは、他の銀行から見ても、自社の顧客にセブン銀行のATMを利用してもらえば、自社のATMの設置数を減らすことができるという利点があることから、奏功したものです。このように考えると、ATMというのは銀行から見て大きなコストになっているという一面がうかがえると思います。

話を戻して、このような例は、別の業界にも見られます。サントリーのビール部門は、2008年に黒字になるまで、ずっと赤字続きでした。赤字でもビールを製造していたのは、ビールを納品できないと、ウィスキーや焼酎の売上に悪い影響があったからです。かつては、部門としては赤字であっても、製造する妥当な理由はありました。

結論は、会社でコストをかけている部門、製品、サービスは、きちんとそれを回収できるだけの収益を得ているか検証すること、そして、仮に、赤字の部門、製品、サービスがあった場合、その赤字は妥当性があるか検証することが大切だということです。このように文字で書くと、至極当りまえとお感じになる方が多いと思いますが、私はこれまで赤字の部門を惰性的に継続させ、業況を悪化させてきた会社をたくさん見てきています。業績のあがらない会社経営者の方は、コストと収益が見合っているかどうかを見直すと、収益改善のヒントとなる可能性があります。
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