2016年12月23日

銀行にとって給与振り込みは赤字

給料日の後には銀行のATMに大勢の列ができます。私は、この列を見ると、「こんなにたくさんの人が銀行に来るのに、この人たちからあまり収益を得られないなんてもったいない」と考えてしまいます。このように書くと、「銀行は利用者からお金を預かっているだけの立場なのに、預金を引き出しにきた人から収益を得ようとするなんてとんでもない」と考える人も多いと思います。確かにそういう面はあります。

でも、もし、銀行のATMを使わずに、給料を直接会社から受け取るとしたらどうでしょうか?会社の経理の人たちは、前もって現金を用意し、そして、ひとりずつ現金を分けて用意をしたり、従業員の方たちはそれを受け取りにいったりする手間や。また、防犯のことを考えれば、銀行から給料を受け取るという仕組みが、ほぼ無料で利用できるということは、とてもコストパフォーマンスが高いと私は考えています。

もちろん、銀行側にもまったく利点がないとは言えない面もありますし、また、銀行の公共性を鑑みると、給与の受取について手数料を徴収しようとすると、社会的な理解が得られない状況にあるでしょう。さらに、口座に給与を入れてれている人たちから何らかの収益を得ようとして工夫をしているとは思います。しかし、給与の受取という点で見れば、銀行はコスト割れしているでしょう。ここで述べたいことは、必ずしも、コストがかけられているサービスについて、それに見合った収益が得られているとは限らないということです。

ちなみに、ATMの利用1回あたりのコストは200円かかるといわれています。これに対し、2001年に新しく開業したセブン銀行は、ATMのサービスを専門に行いました。そして、他の銀行の顧客に自社のATMを利用させ、その顧客が口座を持つ銀行から手数料を徴収するというビジネスモデルに成功しています。これは、他の銀行から見ても、自社の顧客にセブン銀行のATMを利用してもらえば、自社のATMの設置数を減らすことができるという利点があることから、奏功したものです。このように考えると、ATMというのは銀行から見て大きなコストになっているという一面がうかがえると思います。

話を戻して、このような例は、別の業界にも見られます。サントリーのビール部門は、2008年に黒字になるまで、ずっと赤字続きでした。赤字でもビールを製造していたのは、ビールを納品できないと、ウィスキーや焼酎の売上に悪い影響があったからです。かつては、部門としては赤字であっても、製造する妥当な理由はありました。

結論は、会社でコストをかけている部門、製品、サービスは、きちんとそれを回収できるだけの収益を得ているか検証すること、そして、仮に、赤字の部門、製品、サービスがあった場合、その赤字は妥当性があるか検証することが大切だということです。このように文字で書くと、至極当りまえとお感じになる方が多いと思いますが、私はこれまで赤字の部門を惰性的に継続させ、業況を悪化させてきた会社をたくさん見てきています。業績のあがらない会社経営者の方は、コストと収益が見合っているかどうかを見直すと、収益改善のヒントとなる可能性があります。
posted by 六角明雄 at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする